2014年3月14日金曜日

遠くにあって思うもの(ウサギルさんのお話)

したっけ、トオルです。
バレンタインデー以来の更新がどうやらホワイトデーになりそうです。(これを書き始めた現在は13日の夜)

今回の主な内容は、以前にもこちらの記事(【アニソン】8tracksでみっつ)の中でちらっと名前を出したウサギルさんに関するお話です。
上記の記事の中では分島花音さんの話のついでで、「ブラジル人で既に分島花音さんにアンテナ張っている方もいる」的な紹介をしたのですが、ホントに日本の音楽に詳しい方で、ともすると日本人より日本の音楽好きなんじゃないか、と思うほどです。
こちらがTwitterのアカウントなのですが、(以下、bioからの引用)
「ウサギルだよ!ミュージシャン、イラストレーター - 好きなアーティスト:戸川純、とろ美、FLOPPY、P-MODEL、POLYSICS、大槻ケンヂ、ぶどう÷グレープ、平沢進、きどりっこ、初音ミク、新世界楽曲雑技団、ムーン香奈、パパイヤパラノイア、プラスチックス、分島花音。」
という感じで、一見サブカル趣味の人かーという感じのよくある音楽ファンのアカウントのように見えるんですけど、この人がブラジル在住ということを知ると認識も大きく違ってくるんじゃないでしょうか。
ご本人もよく「特にニューウェーブが好き」ということを言ってらっしゃるようなんですが、このbioからもそうした趣味が伺えますよね。
しかし、これは日本人の私が「キング・クリムゾンが好きで」というのとは全然次元の違う話で、そもそもクリムゾンは世界的に知られてるバンドなんですけど、日本のニューウェーブや非クラブミュージック的なテクノの世界というのは世代的な問題もありますし日本国内ですらあんまり一般的な趣味ではありません。(好きな人が少ないとは言いませんが)
そこはまだわかるとしても、新世界楽曲雑技団というのはゲームメーカーSNKのサウンドチームの名称です。



こちらは「餓狼伝説」シリーズの有名なBGMのひとつである「ギースにしょうゆ」という曲(個人的な思い入れでSPECIALではなくREAL BOUTの音源を選びました。あのサントラなんで売っちゃったんだろう…)なんですが、対戦格闘ゲームが大流行した時代のゲームファンには人気のあるサウンドチームでした。
ちなみに和風の曲ばっか作ってたわけじゃないんですがこういうのもあります。



ちょっと話が脱線しかけましたが、要するにただ日本の音楽が好き、というだけじゃなくてゲームなんかも含めて日本のカルチャーに深い愛着を持ってる方のようです。

bioにも書いてらっしゃるようにウサギルさんはご自分でも音楽をやられていて、今のところ発表されてる音源は日本の既存曲のカバーが多いんですが、そのカバーのセレクトがまず驚きに満ちています。
音源はブログbandcampsoundcloudなどを利用して公開・配布してらっしゃるんですが、せっかくなので一部をここで。




こちらはマキシマム・ザ・ホルモンのカバーで私は見たことがなかったのですがアニメ「DEATH NOTE」のEDだった曲のカバーのようですね。ジャケ絵としてもデスノートのキャラクターのドット絵を使用してらっしゃるのでアニメから知られたのかもしれません。



こちらはDir en Greyのカバー。この記事のようにウサギルさんのことを日本で紹介する場合よく用いられる音源のようですが、インパクトありますよね。
本人の歌唱だそうですが、bandcampの自己紹介にも書かれてるように男性だそうですよ!



チップチューンという手法だけでなくそもそもゲーム音楽のカバーもやってらっしゃるようです。私はこのメドレーの始めから10秒くらいのところのキラキラした「ここから何かが始まる」感が好きです。
(ブログなどでは今のところ最新らしいLUNA SEAの「STORM」のメガドライブリミックスカバーというのもあるんですが、どうやらセガに対する思い入れも強そうです。ちなみにそのカバーもゲームBGM感あっておもしろかったです)



カバーしてるのは日本の曲ばかりでもなくて、有名なBugglesの「ラジオスターの悲劇」なんかも手がけてらっしゃるのですが、このチップチューンカバーが私にはどうしてもゲーム「MOTHER」のBGMに近い気がしてなりません。




ついでなのでそれも。(冒頭のOP曲や5:04から始まる最初の街のBGMとかどうでしょう)
このゲームのサウンドトラックはムーンライダーズの鈴木慶一さんと当時任天堂に在籍されてた田中宏和さんの共同制作だったようで、ガイドブックか何かで鈴木慶一さんが「アメリカの雰囲気を出そうとした」というようなことをおっしゃっていたような気がします。(ものすごく確証性の低い記述)
そのイメージの中にMTVの代表的なプログラムのひとつであったバグルスのPVがあったのかもしれないですね。

他にも色んなカバーがあるんですが、せっかくなので上に貼った音源で気になった人はブログbandcampの方も見て実際に音源に触れてみてください。

で、私はウサギルさんについては最初に挙げたマキシマム・ザ・ホルモンの「絶望ビリー」のカバーで強い関心を持ちました。
youtubeの方に寄せられてるコメントだったかで「ポケモンのジムトレーナー戦っぽい!」というのがあった気がするんですけど、私はポケモンもやったことがないしデスノートもホルモンのこともよく知らないんですが、とにかく日本のロックをカバーしたこのチップチューンが確かにゲームの戦闘BGMのようで、なおかつかっこいい!ということでハマりました。
その勢いで他の動画も見たりしてたんですが、つい先日上記のようにブログで音源配布してることを知りDLして最近よく聴いてたのです。
そのことをソーシャルで話に上げていたらご本人から声をかけてくださったので、思い切って色々尋ねてみました。長い話に付き合ってくださり、気になってたこととかも教えてもらえました。
MOTHERについては「クラシックなゲームタイトルだってことは知ってる!」ということで直接の関係はなかったようです)

ウサギルさんが話してくれた内容は個人的な対話だから、という部分もあったかもしれないのでそのまま転載はしませんが、「そもそも日本の音源をどうやって手に入れてるの?」という部分に質問したところ、「日本のCDを輸入して売ってる店もあるけど、原価の十倍くらいになっててとても買えたものじゃない。luxury itemsを買うような値段だ。それでも買える値段のものは買っている」とのことでコレクションの一部を写真で送ってもらったのですが、その中にたまの「さんだるというアルバムがあって、「私もこれ去年買ったよ!」とか言って写真を送り返してちょっと笑ったりしました。(ちなみに他にはJ-popの8cmシングルがいっぱいあったり、ものすごく古そうな童謡のLPなんかもありました)

で、一番気になる部分の「どうやって日本のニューウェーブ音楽を知ったの?」という質問については、「自分が子供の頃に父親が聴いてたYMOのアルバムが好きで、似たようなバンドを探してるうちにそういう人たちに行き着いた」ということでした。

この「お父さんが聴いてたのがきっかけで」というのが個人的にすごく共感できる話だなあと思っています。
例えば、昔はロックやテクノが好きだった私がここ何年かで高垣彩陽さんのようないわゆるアイドル声優の音源を買ったりするようになりました。
その背景には私のお父さんが谷村新司さんや石原裕次郎さんや美空ひばりさんのような典型的な昭和歌謡を愛好する一方で「聖子ちゃんは歌がうまいんだよなあ」とアイドル当時からの松田聖子さんの歌をすごく支持する面を見てきたのが潜在的に関わってるんじゃないかなあという気がしています。
それに、そもそもロックについても筋肉少女帯ユニコーン(最近「ケダモノの嵐」はカラオケで歌うと楽しい曲だと気づいたのですがあれはアルバム持ってないんですよね……久々に動画で聴くと演奏もかっこいいのです)なんかから入っていったのはともだちが聴いてた彼らのアルバムを借りてテープにダビングして聴いていたのがきっかけですし、そこからナゴムやニューウェーブに傾倒していったのにも間違いなくそうした人の影響があったと思います。
お部屋でヘッドフォンをかけたりスピーカーの前に体育座りしたりしながら音楽を聴いてると、孤独な趣味だなあ、と思うことがしばしばありますが、そもそものきっかけとして身近な人との交流から伝わってきたものだということは音楽趣味の基本という気がします。
ウサギルさんとは関係ない人なんですが、今まだ大学生というお年で大滝詠一さんが好きだった、という方がいて、「はっぴいえんどからの流れかな?」と思っていたら、「お父さんお母さんが車の中でよく聴いていて」という理由だったので、同様のことを思いました。
私がこういうブログなどの活動をしてるのも、誰かにとってのそうした人になれたらなあ、というのが根底にあるのだと思います。

自分の話が長くなってしまいました……

ウサギルさんの悩みとして「スタジオ代も高すぎるし録音環境がないのでなかなか新しい曲にとりかかれない」というのと、「自分の歌はブラジルではすごい嫌われる」ということも話してくれたんですが、それに加えて冗談っぽく「(自分のカバーで)日本のアーティストに怒られないよう願ってる」とおっしゃってました。
上記のように音源入手もカバー制作も大変な状況で立派なファンアートを創作されてる人に、オリジナルのクリエイターも寛容であってほしいなあということもちらっと思ったりしています。
それをそのまま日本の同人活動における二次創作(Aチャンネルのファンアカウントである私のことも含めて)と照らし合わされてしまうとちょっと困るのですが、ウサギルさん自身のブログに「ブラジル同人音楽」とも書かれたりしていて、この辺も含めて日本のカルチャーへの造詣の深さをうかがえますし、むしろ日本の同人音楽活動をされてる方との連携があればいいのにな、と思ってたりします。
具体的な名前を挙げると迷惑がかかるかもしれませんが、「ぱんださんようちえん」や「きりんさん女子大生」(私は「歩いたら休め」という曲が好きという言葉では表せないくらい体に染み付いています)を制作されたサイドプロテアさんとのコラボとかあったらすごいおもしろいことになるんじゃないかと勝手に思ったりしています。




最後にものすごく無責任な言葉ですが、

ウサギルさーん、日本に遊びにおいでよ!!!

と、割と本気で思っています。
そもそもCD買うのも録音するのも経済的に大変だというのにこういうこと言うのはホントに無責任なんですが、彼が日本の同人音楽イベント(即売会で頒布するのはちょっと「怒られないように」というような面からも抵抗があるかもしれませんが合同ライブとかで)に来るよ!って言ったら絶対会いに来る人はいると思うし、上記の妄想的なコラボの話を持ちかけられることもあるんじゃないかと思うんです。
鉄は熱いうちに打って!!!
(私が知らないだけで既に結構日本に来られていたらお恥ずかしい限り)

ホントに最後の話ですが、現在ウサギルさんはbioにも挙げてる某有名テクノバンド=仮称Pとしておきましょうか、Pのカバーの製作中のようで、発表時期は分かりませんが「まもなく」という言葉を使われていましたと書いて結びとしておきましょう。



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