2014年2月3日月曜日

【ゲーム音楽】DOD3のサントラでゲーム音楽的なゲーム音楽という考え方について

ブォナセーラ、トオルです。
すっかり2月めいて来ましたけど今年初めての更新です。あけましておめでとうございます。
毎度毎度、自分の書いた記事を後から見直して「長いなあ」と思うのでサクサク行きましょうね。(こういうので長くなっちゃうのですが)

もうそろそろ日本国内でもPS4が発売されようかという秒読みの時期に差し掛かってきたと思うんですが、去年末の12月19日という時期にPS3で発売されたゲームソフト「DRAG-ON DRAGOON3」(ドラッグオンドラグーンと読みます。以下、このシリーズタイトルを「DOD」と記します)のサントラを購入しましたのでそれ(DOD3というよりはDODシリーズの音楽)に関するお話をちょっとだけ。

とりあえず8tracksを簡単に組んでみたのですが同じCDから3曲以上入れられないという都合からDOD3以外のゲームの曲も入っています。シリーズひっくるめたサンプルとして考えていただければ。



ゲームの一作目が出たのが2003年9月11日ということなのでもう十年以上前のお話ですね。(ハードはPS2)
一作目の音楽を担当したのは佐野電磁こと佐野信義さん相原隆行さんのお二人。ともにナムコのサウンドチーム出身なんですが、個人的には細江慎治さんと一緒に「リッジレーサー」シリーズ初期の音楽を担当されてた人たちという印象です。(多分自分のお小遣いで初めて買ったCDが「リッジレーサー2」のサントラだったと思うので……ちなみにこの時代のリッジレーサーのサントラでは「レイブレーサー」が特にお気に入りでした。今でも時々聴いてはうひーとか言っています)
で、そのリッジレーサーがアーケードで一作目を発表したのが1993年ということなので、DODの更に十年前ですね。
ナムコに限らない話でしょうが、ゲームメーカーは人の流動性が激しいようなので十年も経つと人の入れ替わりが起きてたりもするようなんですが、DODシリーズではそうした流動の中で別世代の同組織に属した人たちが別の会社の現場で集結というようなことにもなっていたりします。(実際の在籍年次はわからないのでかぶってる時代もあったのかもしれませんが)

今回取り上げるDOD3のサウンドトラックを手がけているのは岡部啓一さん、帆足圭吾さん、石濱翔さん、高橋邦幸さんといった面々で、彼ら主要面子は全員岡部さんの会社MONACAに所属するサウンドクリエイターさんです。(他に佐野電磁さんと遠山明考さんが数曲手がけていらっしゃいます)

この方々の名前、特に帆足圭吾さんと石濱翔さんの名前に見覚えがある、という方はおそらくアニメ「アイカツ!-アイドルカツドウ!-」のファンの方ではないでしょうか。お二人とも主題歌や作中の主だった劇中歌などを作曲されています。そもそもアイカツ!という作品の音楽をMONACAで制作しているようなのでサントラやその他ボーカル曲に岡部さんや高橋さんの手がけてらっしゃる曲ももちろんあります。

ちょっと主だった曲をいくつか…

KIRA☆Power(現行OPテーマ)/作編曲:石濱翔



硝子ドール/作編曲:帆足圭吾



岡部啓一さんと高橋邦幸さんの曲についても貼りたいところですがあんまりやり過ぎるとアイカツ!の記事になっちゃうのと重くなるのでカツアイ!(ダジャレ)させていただきます。
一応タイトルだけ挙げておくと高橋邦幸さんは「さまさまばけーしょん!」(サントラに入ってます)等、岡部啓一さんは「We wish you a merry Christmas (AIKATSU! Ver.)」等のボーカル曲とBGMを作曲されてます。

そもそもMONACAを立ち上げたのがゲームメーカーのサウンド部出身者ということで当初の主軸活動はゲーム音楽だったのでしょうけど、やはりナムコから移籍されてきた神前暁さんの参加でアニメ音楽の分野にも取り組むきっかけができたようです。
「涼宮ハルヒの憂鬱」シリーズや「らき☆すた」などの京都アニメーション作品では神前さんの名前しか出ていなかったと思いますが、アニプレックス関連の作品から岡部さんやMONACAとの共同名義(神前暁・岡部啓一「放浪息子」、神前暁・MONACA「STAR DRIVER~輝きのタクト~」、「Aチャンネル」など)が増え、アイカツ!で本格的にMONACAのチームで制作というスタンスを押し出してきた感じでしょうか。


さて、お話をDODシリーズに戻しまして、ゲーム一作目をプレイして驚いたのは……驚いた点を挙げるとキリがないゲームで、「分岐する全ての結末がバッドエンド」と言われるようなシナリオとかにもあるんですが、音楽もすごかったんです。



例えばこれは一番最初のステージのBGMだったと思うんですが、ちょっと聴いただけで既存のゲーム音楽の文脈にあるオーケストラ調とは趣が違うことがわかっていただけるかと思います。
ちょっと聴いただけでもインパクトのある音楽なんですが、このゲームはいわゆる「三國無双」的な、広いマップを走り回って群がる敵をちぎっては投げちぎっては投げ…という内容なので、大体この曲を三十分近く聞き続けることになります。
このゲームのBGMは基本的にずっとそういうことの繰り返しなのです!!!
恐ろしさが分かっていただけるでしょうか……(ちなみに動画を貼った第一章のステージは特に出てくる敵の数が多く武器を鍛えるのに向いていることから何度も繰り返しプレイした人が多かったことだろうと思われます)

私は初めこのゲームのBGMに触れたとき、「これは現代音楽(スティーブ・ライヒジョン・ケージのような)を意識したものなのだろうか?」と思ったのですが、最近入手したサントラ盤のブックレットで佐野信義さんが種明かしのようなことを書かれてました。以下、その抜粋です。

「ドラッグ オン ドラグーンの一連の楽曲は、まず既存のクラシック曲郡から、本ゲームの雰囲気に合致するフレーズを徹底的に抽出し、それら全てのフレーズを新たにフルオーケストラにより演奏、サンプリングしたものを、あらためてコンピューター上で再構築していきました。
調、テンポ、音場感等すべてが違うフレーズ群を、慎重かつ大胆に重ねていき、チョップとシャッフルにより通常のクラシック音楽ではあり得ない旋律を紡ぎ、そしてそれらを執拗なまでにループさせ、逆再生等のギミック、強烈なエフェクト等、いわゆるクラブ系の手法を十二分に施した、今まで誰も聴いた事の無い「クラシック」。(後略)」

DODのサントラで現代音楽的、と思ったのはいわゆる単純旋律のループ、ミニマルと呼ばれる手法などが目立ったからでもあるのですが、佐野さんはむしろそこからエレクトロダンスミュージックを経由してクラシックでDJするような感覚で臨んだ、ということなのかもしれません。(それはリッジレーサーなど他のゲームで見られる作風からの判断ですが……)

こうした種を知らない状態でずっと「現代音楽的」という所感を持っていたのがDOD一作目の音楽でした。二作目もゲームはプレイしたんですが音楽はあんまり記憶に残っておらず、今回取り上げたい一連のスタッフからも離れたものらしいので本文では触れません。

DODシリーズがPS2で1,2と出た後、シリーズタイトルではないのですが同じ世界のその後、というかたちで発表されたのが「ニーア・ゲシュタルト/レプリカントです。(PS3版がレプリカント、X-BOX版がゲシュタルト)
こちらの音楽は岡部啓一さんが担当されました。これについて書いた記事(【ゲーム音楽】まぜまぜおゆうぎ)もありますので、そちらも合わせて読んでいただけるとより楽しめると思います。(あんまり長くない記事なのでどうか)
リンク先の記事で最後に挙げた曲に「ZABADAKのような民族音楽調」といった印象を書いてますが、多分そっちの趣味の方でも楽しめるアルバムだと思いますので普段ゲーム音楽聴かないしそもそもゲームやらないよ、という方にも聴いていただけたらなあと思います。
記事に貼らなかった中からもサンプルを一曲。



聖歌のような感じですが、反響しすぎて音がビリビリ震えちゃってる感じとか、石造りの建築の中で思いきり声を出して歌ってるような空気感が出ています。


長い回り道をしましたが、上に書いたような諸々の文脈(主にDODシリーズと元ナムコのサウンドクリエイター陣という柱)を見事に受け継いだのがDOD3の音楽だと思ったので、このような形で書かせていただきました……今何人残ってるでしょうか?(読んでくれている人が)
実はこれについても種明かしというほどではないんですが、たまたま買う前に制作者本人の言葉を聞いてしまいました。
DOD一作目の音楽を手がけた佐野信義(佐野電磁)さんが毎週ラジオとUstで配信してる「電磁マシマシ」(リンク先は番組Facebook。1/25に岡部啓一さんゲストの記録がありますね)という番組があるのですが、ちょっと前に岡部啓一さんがゲストの回がありまして、そこでDODシリーズの音楽についてお話されていたのです。
サントラアルバムのブックレットにも書いてあることではあるのですが、DOD3の音楽を作るのに当たって、ディレクターの横尾太郎(「ヨコオタロウ」表記のときも。DODシリーズやニーアを通してディレクションされた方だそうです)さんからは「ニーアとも今までのDODとも違うものを」というオーダーがあったそうです。
そう言われて作ったけどやっぱりニーアっぽいものが出てしまうのは「自分から出てくるエッセンスは簡単には変えられない」とおっしゃっています。
一方で、ニーアやDODに見られた統一感のあるサウンドに対し、DOD3ではゲームの展開内に音楽でギャップ、コントラストを生みたいと考え、ボス戦の音楽をそこに至るステージBGMとはまるで違う雰囲気にしようとされたようです。ラジオでも参考にとかけていた曲を貼っておきましょう。



悪魔城ドラキュラシリーズのようなイントロはちょっとダリオ・アルジェント監督の映画音楽を担当したゴブリンのセルフカバーバンドDaemoniaによる「フェノミナ」のテーマとかも思い出してしまいます。



ブックレットには「ビート感と歪みの強いギターから成るボス曲」と簡単に書かれてますが、ラジオの方ではもう少し突っ込んだことをおっしゃっていて「昔から今に続くいわゆるゲームミュージックらしいゲームミュージックが正当に進化したらこうなった、みたいな形」「縦シュー(ティング)のような」といった表現を用いて説明されていました。

ここで言うゲームミュージック的なゲームミュージック、縦シューというのがどういう音楽かというと



例えばこういった感じの? ケイブ「怒首領蜂」シリーズのようなイメージ(コンポーザーは主に並木学さん)で言われたのかなあと思います。シューティングゲームはやらないのでこれがサンプルとして適切かどうかもよく分かってないのですが、門外漢からも縦シューティングってこういうイメージ、という感じではあります。(門外漢ついでの憶測だと東方シリーズとかも視野に入ってたのでしょうか……全く聴いたことがないので詳しい方の補足お願いできたらと思います。ついでのついでですがひょっとしてコナミのいわゆる音ゲー群の中にもこういう感じはあるのでしょうか?)

あるいはもっとシンプルな例としては「まもるクンは呪われてしまった!」の「YO-KAI Disco (冥界入口ワールド)」という曲なんかがいいのかもしれません。(ゲーム自体は厳密な縦シューのジャンルには入らないでしょうけど)



で、岡部さんのような「ゲームミュージック的なゲームミュージック」という言い方があるとしたら「ゲームミュージック的でないゲームミュージック」も現状あるということです。
それは岡部さん自身がニーアでやられたことでもあるでしょうし、私の好きなゲームサントラで言うと大谷幸さんの「ワンダと巨像」なんかがそうかなという気がします。



あるいはモンスターハンターシリーズの中でもジエン・モーランのテーマとか



オーケストラがゲーム音楽っぽくないと言いたいわけではないんですが、生楽器の風味が強いと昔からある打ち込みのピコピコしたゲーム音楽といった趣とは大分違ってくるので、こうした曲をゲームに使うことと、こうした曲が使える状況でもあえて電子音でゲーム音楽を使っていく姿勢の違いを簡単に2つに分けてしまうと「昔から今に続くいわゆるゲームミュージックらしいゲームミュージックが正当に進化したらこうなった、みたいな形」の音楽とそれ以外の音楽(それらはおそらくゲーム以外のカルチャーで発展してきた、ということが大事なのかもしれません)になって、その両方を混在させたのが今回のDOD3のサントラ、ということが言えそうです。
アルバムは二枚組で一枚目にステージBGMなどのオーケストラ調の曲を、二枚目には上に動画を貼ったような激しいギターの入るボスの曲(十パターンあります)とボーカル曲を中心に収録しているので、一枚目二枚目の切り替えでギャップ、コントラストを十分に堪能できると思います。

余談ですが曲調としてロック的なゲームミュージックは昔からありますが、そういう方向のも音が生に寄るとどういう文脈から判断するべきかちょっと戸惑います。




※追記
そういえばDOD3のサントラではほぼ全曲に声要素が入ってるのですが、その声の中にはニーアに参加されてたEmi Evansさんも含まれています。他に中川奈美さんヨルハというユニット? ボーカル曲に藍井エイルさん、内田真礼さん、鬼束ちひろさんらが参加されています。

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