2012年12月22日土曜日

懐かしい未来

年の瀬ですね、トオルです。
師走もクリスマス直前となれば鬼頭先生も走りますし鎌手先生だって体育教師だからそれは走ります。佐藤先生は走ると貧血で倒れそうですが、カラオケで熱唱するのは大丈夫。
それはさておき、私も最近はあれこれと駆け回ってる感じで年末感を味わっています。
ちなみに記事タイトルは新居昭乃さんの1stアルバムからですが、今回は昭乃さんの話ではないことを予め書いておきます。

さて、近頃の私が電波ソングに傾倒し始めて代表的な音源を買い集めたりしているのは日々のツイートを見てくださってる方なら大体察知してもらえてると思うのですが、今日取り上げたいのはMOSAIC.WAVです。
Twitterの方ではSHORT CIRCUITシリーズの話をすることが多かったのですがI'veが特別好きなわけでもなくて、他にも興味のある人はいっぱいいるんだけど安い中古音源が入手できたのがたまたまSHORT CIRCUITの1,2だったとかの理由でI'veから入りました。
これもたまたまというか、何かの巡り合わせがあってか、私の記憶にある限り「かわいくて変なエレクトロ」といった意味合いでの電波ソングとの出会いは、MOSAIC.WAVの「片道きゃっちぼーる」だったと思います。アニメ「ぽてまよ」のOPテーマでした。
MOSAIC.WAVはもっと前からアニメの主題歌も手がけていたようですが、その頃の作品には触れていなくて、偶然アニメ好きの友人の家で8時間くらいアニメを(その半分以上の時間はOPとEDだけを)見ていて、その中で気に入ったものの一つが「ぽてまよ」だったので、私は放送途中からだったか、終了後にDVDで借りてみたんじゃないかと思います。
そんなことより、「こういう音楽の作り手にMOSAIC.WAVという人たちがいる」という認識はその頃くらいから私の中にあったけど、あらためて音源を買ったのはつい最近、というお話です。


私の通っている葵ヶ丘高校は東京二十三区外のどこかという裏設定だそうですが、私の家が愛知県にあることは日々のツイートから読みとれる通りです。
先日のヘッドフォン購入の前、試聴のためにノムラ無線に行ったとき、近所だったのでまんだらけのCDコーナーを見ていったらMOSAIC.WAVのコーナーに前々から気になっていた「からす天狗うじゅ」関連のシングルが三枚と「キミは何テラバイト?」があったのでまとめて購入しました。
ちなみにご存知のない方のために補足しておくと「うじゅ」というのは東映太秦映画村で毎年行われている太秦戦国祭というイベントの公式キャラクターで、MOSAIC.WAVはこのイベントのために毎年シングルを発表しています。(今年は主宰者側の都合でイベント参加できなかったようなので新譜はなかったらしいですが)
例えばこんな曲が知られています。


カラオケで歌ってみたいですね……。どこかに入ってるんでしょうか?
ちなみにこの曲は「電脳合戦×うじゅの陣!」というシングルのカップリングです。シングル欲しいけど見つからないよー、という方はお気を付けください。表題曲も勿論いいんですけどね!

話が脇道に逸れてばっかりですが、うじゅ関連三枚と一緒に買った「キミは何テラバイト?」はこんな曲です。


YMOのようなイントロからバグルスのようなボコーダー(それではむしろYMOまんまでした)ボイスに繋がる導入が何ともノスタルジックです。そもそもバグルスの代表曲である「ラジオスターの悲劇」がノスタルジックな内容の歌詞を電子音楽に乗せて歌う先駆だったわけですが、この曲の歌詞もそれを踏襲してか、どこか郷愁を覚えるものになっています。

「ボクは内蔵80GB
 キミは何テラバイト?」

というのが一番のサビの締めなんですが、「自分が初めて買ったPCに内蔵されてたHDDって容量どのくらいだったっけ? あれでビデオ編集とかよくやったなあ」等のことが思い出されます。

電波ソングに限らず、基本的には歌詞とかの要素よりも、最近はリズム主体で音楽を聴いてることが多いのかなあ、と思っていたのですが、あらためて音源を買って聴いているとMOSAIC.WAVの曲は歌詞が頭に入ってくるなあ、という印象を受け、もっと聴いてみたいと思っていたらベストアルバムが出ていることを教えてもらったので、購入しました。収録曲についてはリンク先の公式を参照してください。
で、このアルバムを特に歌詞カードなど読まずにざっと聴いた印象が「主義主張が強い」というものでした。
I'veの手がけた電波もまとめて聴いたわけですが、その印象は「これは虚構だからね」という前提意識があって成り立つ割り切った娯楽という感じでした。(それが薄い、軽い、だから悪いというのではなくて、姿勢の違いが現れてるなあと思われる部分の印象です)
このベストに収録された曲もゲームやアニメなど、何かのテーマ曲として作られたものが多いので虚構前提と受け止められる曲も勿論あるのですが、それ以上に何か「本気の一言」を潜ませてある感じが強くて、その一言が何となく聴いていてもパッと頭に入って強く残るのです。

彼らは自分たちの音楽を「AKIBA-POP」という風に提唱しているわけですが、その部分の主張はやはりオリジナルのAKIBA-POPシリーズに強く現れています。
ベストには柏森進さんによる各曲解説のミニブックが同梱されてるのですが、そこに書かれている解説が非常に興味深くて、AKIBA-POP的な主張が歌詞だけにとどまらず、楽曲制作の色んなところに含まれてることがうかがえます。

例えば「We Love "AKIBA-POP"!!」の解説では、

「オリジナル曲を作るに当たって、オタク文化を肯定することから始めた。当時としては画期的なつもりだったけど、若いうちからネットでオタク仲間の存在を知れる下の世代から見れば、これでもまだ自虐的かもしれない」(原文ママではないです。詳細は是非アルバムを手にしてみてください)

といった、文化的背景に関することや、

「当時はみんなかっこいい音楽ばかり目指してたから恥ずかしい音楽をやろう。アレンジャーから見たら無駄な音符が多い曲はダメだけど、無数に音が重ねられて無数に音色が選べる今の技術で、情報過多な現代を表すために、素人だから許されるダメな音楽を敢えて作ろう」

といった技術や作曲編曲の方法論に関することまで言及があります。これはほんの一部分からの抜粋ですので、重ねるようですが興味のある方は手にとって読んでみていただきたいです。

私は特に二つ目の解説の内容に、パンクニューウェーブ的な根元的欲求を感じるのですが……その辺は高坂商店さんから発行される予定の同人誌「T娘4」に寄稿したコラムともかぶる部分なので、こちらも手にとって読んでいただけると嬉しいです。冬コミは落選してしまいましたが来年発行する感じの予定だそうです。(宣伝)

先にI'veのアルバムを聴いたときは元ネタが分かるというか、基本的に昔聴いたダンスミュージックのトランスとか、もっと古いユーロビートって呼ばれた頃の感じとか、アシッドハウスとか、或いは広義のディスコサウンドでファンクビートを取り入れていたりとか、音楽様式的な型が分かりやすかったんですが、MOSAIC.WAVの曲は何回聴いても「これはこの辺から来た音楽だろう」というのがハッキリと分からなかったんですね。AKIBA-POPという言葉をエレクトロポップの中の一個のベクトルという風に取ってしまえばそんなに難しいことはないのかもしれませんが、ポップだけに色んな要素がごったになってるんでしょうし、私なんかはゲームミュージックからの類推で聴いても楽しめるので、まだまだ掘り下げようはある気がします。

ちょっと長くなりましたが、最後に挙げておきたいのが、ベストで初めて聴いた中で一番気に入っている「SPACE! WAVE! AKIBA-POP!!」です。


ホントは6分半くらいある曲なんですが、大体こんなイメージということで。
この曲に関しては、歌詞がまんま秋葉に棲息する人たちの生活を切り取ったような、言葉通りのAKIBA-POPだなあという印象です。
「アニメを見てたら空前絶後の超展開 まんまるおめめで見てたんだ 伝説誕生 奇跡の瞬間!」とか、「ふしぎなおもちゃが大流行」とか、聴く人それぞれによって具体的な対象は違うでしょうけど、思い浮かぶイメージがあるんじゃないでしょうか。私だったら上の歌詞からは「人造昆虫カブトボーグVxV」なんかが浮かびます。(おもちゃは流行ってないか…)
上にも書いたように私の家は愛知県ですが、私の短い人生の短い間に墨田区で暮らしていた時期があって、休日はよく総武線や自転車に乗って秋葉原をウロウロしていました。私の住んでる間にもUDXやヨドバシができたり、中央通りの模様も色々変化していました。ラジオ会館も解体されてしまったようですし、町並みも徘徊する人も変化したかもしれませんが、2006年に発表されたこの歌(丁度私が秋葉に出入りしていた頃ですね)の内容は、今聴いても共感を得られるものじゃないでしょうか。
話は逸れるのですが、来年2月に東京へ行く予定なので、そのときついでに秋葉に買い物をしに行きたいと思っています。(中野もね)

ところで、柏森さんの解説では上の「ダメな音楽を作ろう」の後に、歌詞から

「We Love AKIBA-POP!! マヨネーズの味わいね
 なんでも濃いめにしちゃうけど 摂取しすぎは毒っぽい」

という部分を引用しています。

押井守監督作品などの劇伴音楽で有名な川井憲次さんが、ベストアルバム「K-PRESURE」のブックレットで、「劇伴を発注されるとき、『いつもの川井憲次節でお願いします』とよく言われるんだけど、自分の味というのが分からない。なんとか節とか言われるのは例えばソースをかければソース味、カレーをかければカレー味、というように、それ一つ加わるだけですぐに『それ』になってしまうほどの強い個性のことで、自分にはそういうものはない」といったようなことを書かれていたと記憶しています。
MOSAIC節はマヨネーズ味なんですね。

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